赤い月 終
変わらないコト
鍵をかけて、部屋を後にする。
中は全部そのままにしてきた。
すぐに戻ってくるのだから。
(自分チ出て、自分チ行くとか、なんか笑える。)
景時は手の中の二つの鍵を弄びながら、クスクス笑った。
秋時が教えてくれた場所は、昔景時が両親と暮らしていた田舎の一軒家だった。
大量の血痕と幼い子供を残し、若い夫婦が消えた家。
当時はかなりセンセーショナルに報じられ、次の借り手が見つかるはずもなく、すぐに取り壊しが決まったそうだ。
だが、秋時はその家を買い取った。
娘が最後に過ごした場所が消えてしまうのは、忍びなかったのだろう。
血塗れだった床と壁紙だけを張り替え、後はそのままの状態で今も同じ場所にあるらしい。
当時から隣の家まで30分という不便な所だったが、現在ではさらに過疎化が進み、陸の孤島になっているという。
多少とんでもないコトをやらかしても、ちょっとした結界を張っておけば、周辺に被害が及ぶことはないだろう。
まさに修行編にはうってつけ。
だが、ソレよりナニより…
単純に、景時は嬉しかった。
世間的には、凄惨且つ謎の事件があった家。
それでも景時にとっては、思い出の詰まった家。
心が踊らないわけがない。
家へ帰るのだ。
それも、自分一人じゃない。
大切な人を連れて‥‥‥