赤い月 終

声が、腕が、髪が、景時の全身が細かく震えている。

抱きしめられているというより、縋りつかれているようだ。

うさぎは優しく微笑みながら、景時の赤い髪を柔らかく撫でた。


「阿呆が。
ちゃんとわかっておる。
よう頑張ったな。
待たせて悪かった。」


あぁ…
うさぎだ。

冷たいのに優しい声。
冷たいのに優しい手。

俺の女神。

俺の…


「うさ…」


『放せ、景時
動くでない』


(今、ソレやるか────?!)


強制的にうさぎから引き剥がされた景時は、チワワのように瞳を潤ませて彼女を見下ろした。


「…
あんまりじゃねーデスカ?」


「あまり時間がない。
此処を出るぞ。」


短い応えを返して、うさぎは景時から視線を逸らした。

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