赤い月 終
「…
おー… まじで変わってねぇ。」
「?
ナニが? って、アレ?」
目を丸くする黒曜に首を傾げてみせた景時は、思いついたように辺りを見回した。
黄ばんで、剥がれ放題の壁紙。
朽ちかけてギシギシ音を立てる床。
散らばった鏡の残骸。
窓は…
アレ?
窓ガラスどころか、木の窓枠まで破壊されてるよ?
だがここは確かに、景時が鏡に招かれてやってきた廃洋館。
もちろん、左右反対でもない。
「…
まじで帰って来れたの?」
壊れた窓から夜空を見上げた景時は、茫然と呟いた。
死を覚悟した。
戻れないと覚悟した。
もう、二度と会えないと…
「景時、体調に変化はないか?
その… 意識や記憶など…」
腕の中から気がかりそうに掛けられた声に、景時は視線を落とした。