赤い月 終
「「は?」」
目を瞬かせながら景時をマジマジと眺めたうさぎの声と共に、背後からも低い声が上がった。
「…
そなたの母君が…
天賦の才とは、このような事を言うのじゃな。」
あら?
自分が褒められちゃったキブンだよ?
景時と秋時は、緩む頬を隠すように俯いた。
「…
なんで息子はこんなにバカなんだ?」
…
ハイ。
もう台無しだよ、黒曜クン。
景時と秋時は、俯いたまま肩を落とした。
「では…
母君… 千景と言ったか?
その者が参考にした文献などはないのか?
赤光について深く考証する術者も、おったであろう。」
「いなかったンだよ。」
顎に軽く指を当て、小首を傾げながら考え込むうさぎに、秋時はにべもなく返した。
「何人の術者が命を落とそうが、何百人の術者が集まろうが、赤光の『闇』はどうすることもできなかったそうだ。
だから大昔から、赤光にヒトとしての命を与えるには、神の手が必要だと言われてきた。
呪術者にとっては、赤光に触れること自体、禁忌だったってワケ。」