赤い月 終

「「は?」」


目を瞬かせながら景時をマジマジと眺めたうさぎの声と共に、背後からも低い声が上がった。


「…
そなたの母君が…
天賦の才とは、このような事を言うのじゃな。」


あら?
自分が褒められちゃったキブンだよ?

景時と秋時は、緩む頬を隠すように俯いた。


「…
なんで息子はこんなにバカなんだ?」




ハイ。
もう台無しだよ、黒曜クン。

景時と秋時は、俯いたまま肩を落とした。


「では…
母君… 千景と言ったか?
その者が参考にした文献などはないのか?
赤光について深く考証する術者も、おったであろう。」


「いなかったンだよ。」


顎に軽く指を当て、小首を傾げながら考え込むうさぎに、秋時はにべもなく返した。


「何人の術者が命を落とそうが、何百人の術者が集まろうが、赤光の『闇』はどうすることもできなかったそうだ。
だから大昔から、赤光にヒトとしての命を与えるには、神の手が必要だと言われてきた。
呪術者にとっては、赤光に触れること自体、禁忌だったってワケ。」

< 73 / 279 >

この作品をシェア

pagetop