赤い月 終
座敷に静かに流れる、秋時の声。
景時は今更ながら、自分がここにいる奇跡を思い知る。
母親が千景だったから。
父親がゼンキだったから。
二人が諦めなかったから。
全てを、命まで、俺のために捧げてくれたから、俺は存在する。
じゃあ…
俺はなんのために存在するのだろう。
禁忌をブチ破るほどの、愛…
「あの加護しか手がねぇンだ。
だがうさちゃんにあの術式が理解できても、俺が千景の代わりになれても、ゼンキの代わりになれるオニがいない。
だから、うさちゃん…
いや、鬼神様。」
ぼんやり話を聞き流していた景時が、驚いて顔を上げた。
秋時の声が、口調がガラリと変わり、丁重な姿勢で頭を垂れる。