赤い月 終

景時は声を出すことも出来ず、霞む眼でうさぎを見上げた。


(まじで… ヤバい…)


ん?
命がヤバい?

ま、ソレも確かにヤバいケド。

本当にヤバいのは、きっとうさぎ。

冷たい瞳にはいつもの輝きがなく、まるで無機質なビー玉に見える。

一切の感情が失せた美しい顔は、益々作り物めいて見える。

まるで人形‥‥‥

『心が死んだ』
って、こーゆーコト?

もう笑ってくれなくなるの…?

傍に行きたいのに、壮絶な圧力で指を動かすことすら出来ない。

これは彼女の拒絶だろうか。

ヒトに対する。

ヒトである、自分に対する。


(それでも、俺は‥‥‥‥‥)

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