赤い月 終
景時の視界に、音もなくうさぎの背後に立った黒曜が入り込んだ。
二人の男の視線が、一瞬絡む。
物言いたげな狂おしい景時の瞳を見て、黒曜は安心させるように軽く頷いた。
「紅玉、よせ。
コイツらは違う。
おまえが一番わかっているだろう?」
褐色の大きな手が、うさぎの目を覆った。
「あ…」
幼い呟きが微かに聞こえ、鬼気が瞬時に霧散する。
夢から覚めた子供のように頼りなげな表情で、うさぎは黒曜の腕の中に崩れ落ちた。
「…
あ… 妾、は…」
嵐に見舞われたような、座敷の惨状。
未だ身動きの取れない、景時と秋時。
自らがもたらした痛ましい光景を目の当たりにし、うさぎは両手で口元を覆って震えた。
「すまない…
違う…
そなたらは、悪くない…
すまない、すまない…妾は…」