赤い月 終

「あのうさちゃんが、あんなになるなんて…
俺、とんでもねぇ地雷踏んじまったンだろーなぁ…」


箒の柄に乗せた両手の上に顎を置いた秋時が、溜め息混じりに呟いた。


「なんだろう…
嫁イビリやっちまった、意地悪ジジィになった気分だ…」


「反省は後にして、動いて、動いて。
夜が明けちゃうよ。」


同じく箒を持って窓ガラスの破片を集めていた景時が、唇を尖らせた。


「…
もう、帰って来なかったりして…」


チリトリを手にして立ち尽くした薫までもが、不吉なコトを口にする。


(お願い、やめて。
俺、泣いちゃうよ?)


奥歯をギュっと噛みしめて。

落ちていきそうな口角をなんとか持ち上げて。


「だーいじょーぶ!
『必ず戻る』って、言ってたもん。」


景時はなんとか笑って見せた。

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