甘くも苦い恋
“璃來”
いきなりあたしを呼び捨てにした彼に、ドキドキが止まらない。
蒼介さん、あたし……。
「蒼介、さん…」
「璃來、俺……」
――ピリリリッ…ピリリリッ…
その時、ケータイの呼び出し音がな鳴った。
「……っ…」
「………」
蒼介さんはあたしから離れ、自身のスーツのジャケットのポケットに入っていたケータイを取り出した。
「……ごめん。俺だ」
蒼介さんはばつの悪そうな顔をして、電話に出た。
あたしは俯き、彼の熱い体の感触に胸がドキドキしたままだった。
「はい、佐田。……うん、うん。分かってるよ。ったく、お前は相変わらずだな。あぁ、おやすみ」
蒼介さんは優しい声でそう言うと、通話を切った。
もしかして……彼女、とか…?
「ごめん、璃來。さっきの続き……」
「ご、ごめんなさい!あたしっ…やっぱり電車で帰りますっ……」
あたしは急いでシートベルトを外し、車の扉を開けた。
良かった、赤信号で……。