甘くも苦い恋
「え、ちょっとちょっと!見て璃來!課長の隣にいる男……めちゃくちゃいい男じゃん!!」
そこにいたのは……
「えー、今日からこの課の課長を勤めてくれることになった、佐田蒼介くんだ。佐田くん、自己紹介を」
パリッとした細身のグリーンストライプのスーツに身を包み、綺麗な黒髪をセットした蒼介さん。
「佐田蒼介です。未熟者ですが、これから頑張っていきたいと思うので、皆さんよろしくお願いします」
蒼介さん、ここの課長に…?
「佐田くんが課長になるにつれて、俺はデザイン部の部長に昇格することになった。みんな、れからは佐田くんに続いて頑張ってくれ!」
かつての課長が挨拶をし、みんなが拍手をする。
課長には悪いけど……あたしは蒼介さんのことが気になって仕方がなかった。
蒼介さんが、課長……。
「ちょっと璃來ー!あんた何ボーッとしてんのよ!佐田課長に惚れちゃった?」
さくらが耳元でそんなことを囁く。
そうだよ…。
あたし、蒼介さんのこと……。
「――美山璃來さん」
へっ!?
いきなり名前を呼ばれて、びっくりする。
そ、蒼介さん…?
「はいっ。な、何でしょう…?」
回りのみんなもびっくりしてる。
そりゃそうだよね。
回りからしたら、会ったばかりの社員と課長だもん。