甘くも苦い恋

「偶然だね、まさか君がここで働いていたなんて」




蒼介さんは変わらない優しい顔で話す。




でも…普通に話してもいいのかな。




あくまでも、ここでは蒼介さんはあたしの上司なんだし……。




「あ、はいっ。さ、佐田課長こそ……」




あたしがそう言うと、蒼介さんの顔からはさっきまでの優しい笑顔が消え、眉間に皺を寄せていた。




「……“佐田課長”か…」




蒼介さんはとても悲しそうな声でそう呟いた。




蒼介、さん……。




「もう、この前みたいに……“蒼介さん”って呼んでくれないの?」




「……っ…!」




あたしは何も言えなくなってしまった。




すがるような、蒼介さんの瞳。




でも、でもっ……!



< 15 / 43 >

この作品をシェア

pagetop