甘くも苦い恋
「偶然だね、まさか君がここで働いていたなんて」
蒼介さんは変わらない優しい顔で話す。
でも…普通に話してもいいのかな。
あくまでも、ここでは蒼介さんはあたしの上司なんだし……。
「あ、はいっ。さ、佐田課長こそ……」
あたしがそう言うと、蒼介さんの顔からはさっきまでの優しい笑顔が消え、眉間に皺を寄せていた。
「……“佐田課長”か…」
蒼介さんはとても悲しそうな声でそう呟いた。
蒼介、さん……。
「もう、この前みたいに……“蒼介さん”って呼んでくれないの?」
「……っ…!」
あたしは何も言えなくなってしまった。
すがるような、蒼介さんの瞳。
でも、でもっ……!