甘くも苦い恋
「璃來…恋愛にもったいないも何もない。単刀直入に言う。君が好きだ」
蒼介さんはいつにない真面目な顔でそう言った
。
「蒼介さん、ダメです。ここはオフィスで…」
「関係ない。俺の話を聞いてくれ、璃來」
グッと肩を握られ、ピクッと体が強張った。
「君は…俺のことをどう思ってる?」
近すぎる距離。
顔にかかる、蒼介さんの熱い吐息。
ズルいよ、蒼介さん……。
「蒼介さん…みんなに、変に思われます……」
「今、みんなは関係ないだろ。頼むから俺の話を……」
――ガチャガチャ
「……っ…!」
資料室の扉を開けようとする音が部屋中に響き渡った。
「あのー、佐田課長!ちょっと資料を使いたいんですけど……」
同僚の島田くんの声がする。
あたしは咄嗟に彼から離れた。
「し、島田くんが…ああ言ってますし、とにかくここは空けないと……」
「………」
あたしの言葉に蒼介さんも同意せざるを得なくなったのか、彼は鍵を開けようとした。
でもなぜか、彼は鍵を開けないまま、あたしの方へと戻ってきた。