甘くも苦い恋
「そ、蒼介さん…?」
「今日、定時で上がれるか?」
耳元に響く、低い声。
あたしはドキドキしながら頷く。
「じゃあ……18時に下のバーで。」
下のバーって……。
このビルの隣にあるバーのことだよね?
「そ、蒼介さんっ…」
「来るまで待ってるから」
蒼介さんはそれだけ言うと、鍵を開けた。
「あ、佐田課長!すみません、ちょっと資料が必要な書類がありまして……」
「いや、いいんだ。俺が占領したのが悪い」
蒼介さんは笑顔でそう言い、オフィスに戻っていった。
「美山、佐田課長と何話してたんだ?」
島田くんが資料の並んだ本棚を探りながら、あたしにそう聞いてきた。
「え、いやっ…別に……」
あたしは思わず答えに戸惑ってしまった。
言えるワケがない。
告白された上に、夜の約束までしたなんて。