甘くも苦い恋
もどかしさと愛しさ
「ごめんごめん。待たせたな」
「いえ、大丈夫です」
加藤さんがお昼を食べ終え、ゴミを捨てる。
「美山。話なんだけどさ…今夜、空いてる?」
「えっ?」
今夜…
今夜は……。
蒼介さんと、約束が……。
「すみません、今夜は用事がありまして……」
あたしがそう答えると、加藤さんは残念そうに項垂れた。
「そっか。なら仕方ないな」
加藤さんはポンポンとあたしの頭を撫でる。
「あの…ここでは、話せないような内容なんですか?」
あたしは小さい声で聞く。
加藤さんは少し考え込んで、ニコッと笑った。
「いや、大したことじゃなかったんだ。気にしないでくれ」
加藤さんはそれだけ言うと、デスクを立ち上がった。
「悪い、ちょっと用足してくるわ」
「あ、はい…」
加藤さんは静かにオフィスを出ていった。