甘くも苦い恋
加藤さん…何を話したかったんだろう。
あんなふうにはぐらかされると、余計に気になっちゃうよ。
「――美山」
急に名前を呼ばれて、ビクッとなる。
しかもこの声って……
「そう…佐田課長……」
やだ、あたし。
会社では“佐田課長”って呼ばないと変に思われるのに。
「今……加藤と何話してたんだ?」
「えっ?」
蒼介さんは真面目な声で聞いてくる。
どうしたの?いきなり……。
「別に…普通に他愛もない話ですよ」
あたしは無難にそう答える。
すると、蒼介さんはしばらく黙った。
「……そうか。悪い、変なこと聞いたな」
苦笑いをしながら、自分のデスクに戻っていく蒼介さん。
なんか腑に落ちない顔してたけど……。
っていうか、あたし……
今夜、蒼介さんと約束してるし……!