甘くも苦い恋
蒼介さん、やっぱりモテるんだ……。
あたしは持っていたバッグを握る。
エレベーターに着き、ロビーまで降りると、仕事を終えた沢山の社員達と鉢合わせた。
あたしは足早に会社を出て、隣にあるバーに急ぐ。
蒼介さん、待ってるかな。
思わず、バーの入り口で立ち止まってしまう。
でも…行かなきゃ。
勇気を振り絞り、バーの扉を開ける。
――ギィー…
木製の扉を開けると、バーテンダーが“いらっしゃいませ”と愛想良く言ってきた。
中を見渡すと、見覚えのある背中があった。
……いた。
蒼介さんだ……。
上質なスーツに身を包み、優雅にジントニックを飲む彼。
こんな姿、会社を女の子達が見たら…奇声あげて喜ぶんだろうな。
そんなことを思っていると、ふと彼がこちらを振り向いた。