甘くも苦い恋
佐田さんとの出会いはほんの数日前。
たまたま寄ったバーで隣の席になった。
あたしも佐田さんもお互い一人で飲みに来ていた。
「君、一人?彼氏とかは?」
彼は突然、そうあたしに聞いてきた。
「か、彼氏なんていませんよ!一人です」
何故かあの時のあたしは妙に焦っていて、咄嗟にそう口にしていた。
「ふーん…そうなんだ……君、可愛いのに」
「か、可愛いなんて……!」
そんなことをさらりと口にする彼に、あたしは終始驚きを隠せなかった。
「俺も一人なんだ。一年前に彼女と別れて、それっきり女の子とは御無沙汰なんだ」
すらりと細い指でカクテルグラスを手にし、青く綺麗な液体を飲む彼。
「あたしは……」
そこまで言いかけて、口を噤む。
だって……あたしには彼氏も何も……
男の人と付き合ったことがないから……。