甘くも苦い恋

佐田さんとの出会いはほんの数日前。




たまたま寄ったバーで隣の席になった。




あたしも佐田さんもお互い一人で飲みに来ていた。




「君、一人?彼氏とかは?」




彼は突然、そうあたしに聞いてきた。




「か、彼氏なんていませんよ!一人です」




何故かあの時のあたしは妙に焦っていて、咄嗟にそう口にしていた。




「ふーん…そうなんだ……君、可愛いのに」




「か、可愛いなんて……!」




そんなことをさらりと口にする彼に、あたしは終始驚きを隠せなかった。




「俺も一人なんだ。一年前に彼女と別れて、それっきり女の子とは御無沙汰なんだ」




すらりと細い指でカクテルグラスを手にし、青く綺麗な液体を飲む彼。




「あたしは……」




そこまで言いかけて、口を噤む。




だって……あたしには彼氏も何も……





男の人と付き合ったことがないから……。



< 3 / 43 >

この作品をシェア

pagetop