甘くも苦い恋
「璃來ちゃん、家どこ?」
「あ…えっと……新宿駅近くのアパートです」
あたしが答えると、蒼介さんは“了解”と言って車を発進させた。
「ちなみに一人暮らしなんだ?」
「はい。大学の時から一人暮らしです」
変だな……蒼介さんとはたったさっき出会ったばかりなのに、何故か一緒にいると安心する。
「俺は中学生の時にはもう家にいなかったなぁ…」
「え、中学生の頃からですか!?」
あたしはびっくりして、目を丸くさせた。
「うん。俺の家さ、片親なんだ。元々家は出たいと思っててさ。その時、たまたま叔父から留学しないかって話をもらって、俺はその話に乗ったんだ」
そうなんだ…。
っていうか、蒼介さんって帰国子女なんだ。
「そうだったんですね…。蒼介さんって、なんだか凄い!」
あたしがそう言うと、蒼介さんはフッと微笑んだ。
「そんなことないよ。あ、ちなみに璃來ちゃんのご両親は?」
ウチは……
「えっと、小さい頃に両親が離婚して…母親に引き取られました。でも、母はあたしのことが邪魔だったみたいで……ずっとほったらかしにされてて。気付いたら養護施設にいました」
「………」
蒼介さんはあたしの話を聞くと、黙ってしまった。
あ、やだ。
もしかして……変に思われたかな?