イチゴ汁
「ここの一番古い傷は、
13歳の時のものよ」
包帯を解いた腕を見つめながら
彼女はとても懐かしそうに笑った。
「ベッドに寝転んで、ドキドキしながら
引っ掻くみたいに切ったの。
そしたら血の玉がぽつぽつ浮いてきてね、
シーツの上に垂れたの。点、点、点って。
イチゴの汁が垂れたみたいだったのよ」
まるで、
これは初めて家族で海に行った時の写真よ、
とでも言うような調子だ。
僕はそう思いつき、ちょっと笑いながら
「ふぅん」
と答えた。