僕と君の物語。
「つばさくんっ!」
後ろから、誰かに呼ばれ振り向いた。
あぁ。昨日の。
「昨日の事考えてくれた?」
入学式前日、俺は友達に理由も教えてもらえぬまま、合コンに連れてこられた。
この人はその時の合コン相手、崎原美緒。
「あぁ」
同じ高校の先輩とう事もあって、朝は俺の家の前で待ち伏せ。
「付き合ってくれるの!?」
そう。昨日の事というのは、告白された事。
返事が欲しいならメールで言ったのに。
メアド教えた意味は何だったんだ。
「無理です」
「何でよ~!」
「美緒先輩の事、全然知りませんし」
「これから知ればいいじゃない?」
甘い声で囁いてくる。
「無理です。すいません!」
両手を顔の前で合わせて謝る。
パシッ
鈍い音が響いた。
「ばか!」
さっきまでの優しさは消えた。
「って...」
跡ついてるな。うん。絶対ついてる。
前に消えていく足音と同時に、後ろからの足音がだんだん大きく聞こえてくる。
「大丈夫ですか!?」
いきなり後ろから現れた女子は、小さかった。
それに...
とっても可愛かった。
身長が小さいせいじゃなかった。
整った顔、透き通るような白い肌、腰までのさらさらの長い黒髪。
完璧すぎてどこかのお嬢様かと思った。
でも、その子が来ていたのはうちの高校の制服だった。
「ちょっとしゃがんでもらえますか?」
「え?何で?」
いきなり意味不明な事を言い出す。
「いいから!」
何だこの子は。
ぴと
「これで大丈夫!」
一瞬だけどいい匂いがした。
甘い匂いとかじゃなくて、花とかのいい匂い...
美緒先輩に打たれたところに触れてみる。
テープ?
「バンソウコウです。血が出てたから」
「あぁ。ありがと」
「じゃあ失礼します」
「あ、待って!」
とっさに腕を掴む。
「な、何ですか...?」
おどかしてしまったみたいだ。
これ以上おどかさないように手を離した。
「名前何っていうの?」
「高野宮高校1年A組の美神桜です」
礼儀よく頭を下げて学校に向かって走り始めた桜の後姿をぼーっと見つめた。
あ、俺の名前言ってない。
「俺は高野宮高1年C組の伊崎つばさ!」
自分なりに大きな声で言ったつもり。
でも、桜には聞こえていないようだった。
「聞こえてるわけないか...」
桜はいきなり止まった。
そして後ろを振り返り...
「つばさくん学校でね!」
大声で俺に返事をくれた。
桜は可愛い笑顔で俺にもう一度礼をしてから、また学校へと走り出した。
思わず口をおさえた。
「やばい...可愛すぎ...///」
「何ニヤニヤしてんだよ!!」
「うわっ!」
1人で照れてる変人の俺に飛びかかってきたのは、竹宮翔悟。
中学からの俺の友達。
家が近いこともあって、よく遊んだりする。
「おっ!前を走ってる黒髪のロングの子可愛くね?」
翔悟が指差した先は、桜だった。
「な?ってお前頬っぺたどうしたんだよ!?」
「え?あ、これ?打たれちゃってさ」
「え?誰にだよ!?」
翔悟の言葉で不機嫌マックス。
お前が合コンに強制で連れてったからだよ!!
「お前のせいだよ!」
殴ろうとして追いかける俺から、翔悟は走って逃げる。
俺の高校生活1日目。
楽しいような、楽しくないような微妙な日になりそうです。