私と5人の王子様。
「甘やかしちゃ駄目だよ〜、ちー。」
陰から覗く小悪党が、
幼い頃の呼び名を使って長身の救世主を諌める。
「遥翔の言う通り。」
スプライトマンがコクコクと頷いている。
草太と遥翔は、こういう時には一際厳しい。
「にしても珍しいね。千隼がそういうのの言い出しっぺになるって、っさ!!!」
バサッッ!!
…ああ、静かだなと思ってた。
「う、…お!?」
隣で居眠りこいていた龍矢がシャキッと背を伸ばした。
頭は奏太に力一杯叩かれて、ボサボサに乱れている。
「さっき駅前で見掛けたんだよ。
三駅先に水族館が出来たらしい。」
千隼がキッチンに引っ込み、片付けを始めながら答えた。
「ああ、あれか。」
遥翔はひとまず…とトイレットペーパーやらティッシュペーパーやらの山をソファに放っていた。
「けど、水族館は逃げないよね。」
そして勿論、余計な一言も放った。
「け、けど夏休みは今日が最後だよ!!」
あたしは今、目の前の宿題から一瞬でも逃げられるのなら何でもする…!
加勢を求めて相棒に視線を送った。
龍矢はコクコクと頷く。
そう…私たちは…チームだ……
「夏休み最後の日〜なんて、一生にほんのちょこーっとしか巡ってこないんだよ!」
「大人んなったらそんなメモリアルイベントデー来ねえじゃん!?」
「龍矢の言う通り!こういうのはね、長い目で見るの!!」
「宿題に溺れた思い出なんて、未来の酒がまずくなるだろ!?」
「子供は子供らしく!!本能に従え!だよ!」
「オープニングで入場料、安くなってるって。」
キッチンから思わぬ助け船。
「ち、い……?」
ト、トイレットペーパー八ロールがマシンガンに見える…
「ひぃいいい!」
「負けるな、藍!!!俺たちは…俺たちはぁあ…!!!」
「千隼…助けて!」
「千隼、何も言うなよ。」
「ちい、分かってるよね?」
「じゃあ、俺だけで行ってこようかな。」
「「「「「それはさせない。」」」」」