戸田くんの取り扱い説明書
その5
唯一の短所とは…。
授業の合間の休み時間。
戸田くんは私の席をのっとって、難しそうな本を読んでいる。
座れず困っている私には全く目を向けず、1ミリたりとも本から視線を逸らさない。
たーーいーーくーーつーー!!
……あぁそう言えばずっと気になっていたけど、戸田くんはなぜ、あんなにも完璧人間なんだろう。
欠点が見当たらない。
この際無理やり見つけようか。
…羨ましいにもほどがあるって。
"キーンコーンカーンコーン"
あ、休み時間終わっちゃった。
「実里、次美術。移動だよ」
「あーほんと? ありがとう!」
清華ちゃんが私に教えてくれる。
そしてそのまま教室を出て行った。
私と戸田くんと清華ちゃんは、選択芸術で美術をすることになった。
「戸田くん、次美術です。 移動ですよ」
私がそう言うと、戸田くんはゆっくり顔を上げた。
「…美術?」
「そう、美術」
戸田くんの眉がぴくりと動いた。
私の席を立って、荒々しく鞄から教科書を出す。
いつも冷静な戸田くんは、様子が違うみたいだけど…
どうしたんだろう……?