戸田くんの取り扱い説明書
私は美術が大好きだ。
落ち着くし、なにより動かなくていいんだもん。
不意に戸田くんに視線を向けると、他の授業ならもう寝ている頃なのに起きていた。
背筋をピシッと伸ばして、前を向いている。
…戸田くんもちゃんと授業受けることあるんですね。
しかしその表情は、真面目に授業を聞こうと目を輝かせる小学生のような表情ではなかった。
なにか恐ろしいものが今にもやって来る。そんな顔。
どうしたんだろう?
しばらくして、美術担当の相田先生が入って来た。
「今日はデッサン。ちょっと難しいのを描くからねー」
そう言いながら、先生はデッサン用の紙を配っていく。
やった! デッサン大好き!
美術のなかでも、特に得意とするのがデッサン。
なんかテンションが上がります!
紙を配り終えた先生は、にっこりスマイルで言った。
「今日から3時間分の授業を使ってデッサンを仕上げてもらいますが、今までとは違うものを描いてもらいます」
そう言うと、先生はなにか描いてあるデッサン用紙をみんなに見せた。