戸田くんの取り扱い説明書
そこには、写真かと思うほどに上手すぎるデッサン。
「今日からのデッサンは、教室の一角を決めて、それをデッサンしてもらいます」
その瞬間、教室中がざわめく。
「えーっ?」とか、「まじでーやだぁ」とか、「めんどくさー」などなど。
きっと私だけだろう。
目を輝かせたのは。
なおもざわつく生徒を「はいはい静かにー」と手を叩き、鎮める先生。
「泣いてもわめいても勝手に出来上がるわけじゃないんだからねー。さぁ始め!」
先生はまた、手をパンパンっと叩いた。
さて、どこを描こうかな?
教室中を見回す。
今の景色そのまま描く?
ドアの方描いてみる?
はたまた天井描いちゃう?
いやいや、それはない!
ふと、また戸田くんを見てみると、戸田くんは険しい表情のまま、デッサンの紙をじーっと見ていて、微動だにしない。
………?
戸田くんらしくない。
……まぁいいや。
私は、窓の方を描いて、外に見える木とかも少し描くような感じにした。