戸田くんの取り扱い説明書
それから2回の授業を終え、そろそろ仕上げに入れる位に描き進めた私。
るんるん気分で、今日1日の授業を終え、家に帰って来た。
リビングのテーブルにメモが残されていて、お母さんの丸っこい字が並んでいた。
『午後からも仕事入っちゃって、
帰りは8時になりそう。ごめんねー!
おかーさんより。』
こんな事はよくある。
お母さんは駅前にある人気のパン屋さんで働いている。
人気なのに雇う人数が少なくて大変なんだそう。
"ピンポーン"
いきなりインターホンが鳴り、「うおっ」と女子高生らしからぬ声を出してしまった。
郵便かな?
呑気に考えてドアを開けると、私は目を見開いた。
「開けんのおっそい」
…なぜだ。
なぜ戸田くんがいるんだ!?
私が口をぱくぱくしているのに、戸田くんはなんの遠慮もなしに入ってくる。
「っ戸田くん! なんで私の家知ってるんですか!?」
私がそう聞くと、戸田くんは耳を抑えた。
「実里が家入るとこ見た」
「えっ、ストーカー行為ですか?!」
「はぁ? んなもんと一緒にしないでくれる、ばぁか」
戸田くんに、「ばぁか」と言われると、まぁいっか、と思ってしまう。
なんか、嬉しくなるというか……
あっ!
いや、そういうんじゃなくて!
別に私はMじゃありませんよ!
誤解しないでください!!
戸田くんはずかずかと、私の部屋に入ってしまった。