戸田くんの取り扱い説明書
私の家に近くなったところで、戸田くんは脇道にそれて歩き始めた。
戸田くんの家も、この先にある。
「え…戸田くん、家の方向こっちじゃないですよ?」
「知ってる」
うっそーーーん。
じゃあ真っ直ぐ帰りましょうよ。
寄り道はいけませんよ。
そんな事を思いながらしばらく歩いていたら、戸田くんが急ストップした。
「…あのさ」
「はい、なんでしょうか?」
戸田くんはなおも手を繋いだまま振り返って言った。
「抱きしめていい」
「っえ!?」
やっぱり今日の戸田くんはおかしい。
いつもよりもはるかに積極的というか…。
私が戸田くんをじっと見ていると、そのまま手を強く引かれた。
そしてすっぽりと腕へGO。
細そうな戸田くんの腕は、やっぱり男子なんだなと思う。
見た目よりも逞しい腕に抱きしめられ、私の心臓はうるさいくらいに音を立てる。
「実里に拒否権ない」
「…うぅ…。はい…」
こういうのほんと初心者なんです!
こうなった場合、どう行動したらいいのかわからない。
戸田くんが抱きしめる力を強めたので、私は戸田くんの胸に顔をうずめる形になる。