戸田くんの取り扱い説明書
ノートをとるのも忘れて、戸田くんの天使のような寝顔をこっそり見る。
机に突っ伏して爆睡している戸田くん。
男子なのに女子並みに長い睫毛が、蛍光灯の光で、白くて綺麗な肌に影を落としている。
幸せそうに寝る戸田くんの寝顔は、今現在私が好きなところ。
性格は、まだなんとも言えないけど…。
どのくらいそうしていたのか、急に先生が私の視界に入った。
「岡田ぁ、戸田が好きなのは構わないが、授業はちゃんと受けろよ〜?」
「ちっ、違います!」
先生は、そうかそうか、と異常にニヤニヤしながら教卓に戻って行く。
世界史担当の池田先生は、生徒のこういうところをいじりたいらしく、その餌食になった生徒も多数…。
実際、今私も餌食になった人間の一人。
私は授業に集中するべく、前に向き直る。
さっきよりも少し大きくなった池田先生の声で、後ろの方からガタッと音がした。
びっくりして思わず振り返る。
そこには、まだ眠たそうにしていて、あいているかないかくらいの目で教室中を見回す戸田くん。
それから頭をがしがしかいてから、何事もなかったかのようにまた突っ伏して寝始める。
その姿に周りは少し笑っていて、私もつられて笑った。