戸田くんの取り扱い説明書
10対1。
これなら戸田くんは圧倒的に不利。
倉庫内に響く鈍い音。
うめき声と共に、人が倒れていくのがわかった。
戸田くん、戸田くん、戸田くん………っ!
ーー…やがて物音ひとつしなくなった。
代わりに、私に向かってカツン、カツン、と足音が響いて近づいてくる。
「実里」
「っ戸田くん!!!」
「うん」
目の前にしゃがんだ戸田くんは、いつもと変わらない表情をしていた。
戸田くんの後ろには、ヤンキース10人が全員倒れていた。
ピクリとも動かない。
「戸田くんっ、ケガは?!」
「大丈夫、してない」
そう言うと、戸田くんはふわりと私を抱きしめた。
「ごめん、実里」
「だっ、大丈夫です! 戸田くんが無事でよかった」
戸田くんはゆっくりと体を離した。
私の、ヤンキースに向ける視線に気づいた戸田くんは、私を立たせると言った。
「大丈夫、気絶してるだけ。みぞおちに1発ずつ蹴り入れてあげただけだから」
戸田くんはなにごともなかったかのように私の手を引いて倉庫を出た。
…いやしかし。
「戸田くん、喧嘩強いんですか?」
「うん、まぁ。中学ん時やんちゃだった」
!?
なんだこの意外すぎる一面は…!
「なんかあの人たち自信満々だったからどうかと思ったけど、やっぱたいしたことなかった。むしろ弱く感じた」
「…………」
戸田くんといれば、ヤンキースに絡まれても安心です。