アポロチョコ
あたしの声が届いたのか、山上のスピードがぐんと上がった。
なんだ、まだ根性残ってんじゃないか、とか。
もともと、追い込みにかかるところだったのかな、とか。
色々想像はしてみたものの、それでもまだスピードが足りない。
二位との差を縮めはしたが、まだ三位の位置は変わらない。
「いけぇ~、その調子だ、抜けぇ~、グゥ~リィ~コォ~」
メガフォンもってスタンドの最前列を先頭集団を追うように移動した。
拳を振り上げて。
力の限り叫びながら。
結果、山上は二位。
最後の最後で、一位の選手に追いつけなかった。
残念。
でも、一人抜いたし。
「はぁ~」
と脱力するあたし。
興奮して疲れた。
席に戻って、はと麦茶をすする。
喉もカラカラだ。
と、トラックからこちらに向かって歩いてくる人影に気がついた。