アポロチョコ
どうやら山上に見つかったようだ。
「なんだ、お前、若宮か」
グランドからスタンドを見上げた彼の額には汗が滲んでいた。
「なんだとはなんだよ……」
「悪かったな、折角応援してくれたのに二位で」
「お前なぁ~、もっと手前でスパートしてれば抜けたかもしんねぇのに」
「だな」
「な、なんだよ、やけに素直じゃねぇか」
「お前の声が聞こえなきゃ、あそこで諦めてた。
なんか、もういいやって感じでさ」
そんな弱音を素直にぶつけてくる山上がちょっと意外だった。
「もったいねぇ~、そんな早い足してんのに」
「上には上がいるって」
「根性なし」
「だな。
でも、グリコってなんだ? なんかのまじない?」
おまけにあたしのグリコの絶叫もしっかり聞こえていたらしい。
「あぁ~、まぁ、そんなとこ」
「お前、変な奴だな」
「よく言われる。でも、二位だろ、すげぇよ、誇れよ」
「ん、サンキュー。遠いとこ、応援きてくれて」
「天気良かったからな、まぁ……、その……、遠足みたいなもんだ」
あたしの照れ隠しに気づいたのか、山上は白い歯を見せて笑った。
「俺はこのあと表彰で、今夜はこっちの親戚の家に泊まることになってる。
送れなくて悪いな。気をつけて帰れよ」
じゃぁな、山上はそう言って、手を挙げるとトラックの方へと戻っていった。