アポロチョコ
「わかった」
霧子の綺麗な顔が綻んだ。
「な、何がわかったんだよ」
「咲が山上が気になるんだ、ってこと」
「まぁ、そうだな」
「おめでとう! 咲にもやっと春が来たんだ。ちなみに今は秋だけどね」
そんな受けないジョークをかます霧子のことがあたしは好きだ。
「ちゃかすなよ」
「茶化してないよ、嬉しいだけ」
「霧子、なんか上から目線じゃねぇ? 自分が幸せだからってさぁ」
あたしは少しだけ膨れて、楽しそうに笑う霧子とその隣りに座る山之辺を見た。
「ま、そう言うな、実際俺達は幸せだけどな。
こうやって三人いても、やっぱりなんか中途半端だろ?
お前にも好きな相手が出来て、俺達だってこれで安心していちゃつける。
山上は、走ることが飯より好きな陸上馬鹿だけど、頼れるいい奴だよ。
咲とはお似合いかもしれん、だから頑張れ」
ハハハ……、と山之辺が笑って霧子の肩を抱いた。