アポロチョコ
それからというもの、山上は必ず朝、あたしに声をかけてくれるようになった。
ま、それは極々普通の友達範囲の挨拶だったわけだけど。
おはよう、とか。
寝癖すげぇぞ、とか。
今日の単語テスト何時限?、とか。
あたしはそれに、心の動揺を悟れないよう、極々平静を装って返事を返した。
おはよう、とか。
マジ?、とか。
えっ、テスト?、とか。
そして放課後、奴の部活を教室の窓から眺めていた。
日が暮れるまでの数時間、誰に邪魔されることなく思いっきり奴を眺めていられることが嬉しかった。
教室の窓にもたれ、奴の走る姿を目で追っている時が、いつしかあたしの一番の幸せな時間となった。
そしてそれは、一月末のある日、状況を一変することとなる。