アポロチョコ

その日、夕方から雲行きが怪しかったのだが、天気予報は曇りだということで、校庭では陸上部と野球部の部活が行われていた。

あたしは日課のごとく、窓にもたれ外を眺めていた。

と、突然の豪雨。

いきなり大粒の雨が空から降ってきたと思ったら、土砂降りになった。

――嗚呼、みんなずぶ濡れだぁ、寒いのに……

部活はまだ準備運動の段階で、あたしは奴の走る姿を見れず消化不良気味。

だけど、この雨だ、こっちも様子を見て帰らなきゃ。

と、諦め気分で席に戻り帰り支度をしていた時、ガラリと教室のドアが開いた。

そこに現れたのはずぶ濡れの山上。

「へっ!」

またまた素っ頓狂な声が出た。

「やっぱ、若宮か」

なんだなんだそれは?

「たしか、置きタオルがあった筈なんだ……」

そう呟きながら自席にかけてあるバックの中を探りだした山上の姿を直立不動で眺めていた。

というより、このあたしが動けずに固まってしまったのだ。
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