アポロチョコ
どうやら山上はあたしがここで奴の部活を眺めていたのを知っているらしい。
どうやって言い訳するか、言い逃れるか。
現場を押さえられた今、空しいくらいの弁解しか思いつかない。
「あ、あった」
滴る雨をタオルで拭いながら山上が発した言葉に驚いていた。
「送ってくから待ってて」
直ぐ着替えてくるからさ、と言い残し山上は教室を出ていった。
――万事休すだ!
走って逃げようか、とも思ったが、陸上部エースの山上にそれはあんまり失礼だろうと思いとどまった。
――わぁ~あああああ……
あたしは八方塞がりで頭を掻き毟った。
「なにやってんだ?」
突如教室に現れた山上に、またもや変なとこを見られてしまった。
「あ、頭痒くってさ」
フッとまた、白い歯を見せて笑う山上。
「変な奴。
雨上がったみたいだけど、もう校庭使えねぇから部活は中止だ。
帰ろうぜ。
お前んち何処?」
「さ、山王」
「……」
その沈黙が、何を物語っているのかをすかさず推測する。
「あ、方角違うなら別々で。あたし一人でちゃんと帰れるし、気にしないで」
あたしは右手の平をパシッと直角に立て、お断りの意思表示をした。
これで諦めてくれたらそれでいい。