アポロチョコ
陸上は基本個人競技なので、面倒な横の繋がりが無いといえば無い。
それでも、季節はずれの、それも二年のあたしが入部するとあって、周りはなんやかんやと詮索をする訳で。
「若宮さん、なんで今頃入部なわけ?
って、別にそれが悪い、っていうわけじゃないけど。
なんかあんまり突然で、なんか特別な理由があるのかな、なんんて」
「ずっと帰宅部で身体なまってさ。
腹の贅肉半端ないわけ。
だから走ろうと思ってさ」
「走るだけなら、別に入部しなくても出来るでしょ」
「いや、まあ、誘われて、断れなくて」
「誰に?」
「うるさいっ! 誰でもいいだろっ!」
「ふぅ~ん……」
絶対納得してません、って顔で意味深な笑いを含んだ女子部部長、西原芳美。
「ま、兎に角、タイム計らせて貰うわ」
と抑揚無く言い置いて、彼女はゴールに向かい歩いて行った。