アポロチョコ
「位置に着いて、用意……」
<パン!>
あたしは100Mを走り出す。
腕を振って、振って。
地面を蹴って、蹴って。
久しぶりの全力疾走だ。
これがまた、案外気分いい。
「13秒20。まあまあじゃない。
フォームは荒削りだけど、腕の振りがいいわ。
基礎体力もありそうだし。
ほんとあなた帰宅部? 勿体無いわね」
呼吸を整え、腕を伸ばす。
なんだか動き出すと止められない自分がいた。
「1500もいいっすか?」
「えっ、あなた短距離じゃないの?」
「う~ん、どっちかというと長く走る方が得意かも」
「そう……」
少し怪訝そうな顔をした西原芳美は、それでもあたしをトラックへと導いた。