アポロチョコ
「凄ぇな、帰宅部だったくせに体力あんなお前」
声のするほうに目をやると、西原のストップウォッチを覗き込むように山上がいた。
「さすが俺がスカウトしただけある」
「なぁんだ、誘ったの山上くんなんだ。
そうならそうと言いなさいよ、わ・か・み・や・さん」
――むぅ……
「うちの女子は高跳びは結構いいとこいくんだけど、走るのがいなくてね。
若宮さんなら、即戦力だわ」
「だろ?」
「ということで、練習は男陸と一緒にやって頂戴」
「へ?」
「あたしは自分の練習があるし。
男陸は山上くんをはじめ、走りはめっぽう強いのよ。
一緒に練習して損は無いわ」
「と言うことで、ほら、行くぞ若宮。
準備運動はもう十分だろ。
先ずはフォームだな。
もうちょっと腕の振りの無駄を無くせば、まだまだタイムは縮まるとみた。
早速練習メニュー組むぞ……」
俄然張り切りモードで喋りだす山上。
――マジかよ……
「おい、聞いてんのか? ほら、行くぞっ」
と腕を掴まれて、引きずられるようにあたしは男子の集団へと進んでいった。