アポロチョコ

一緒にいられる嬉しさと、恥ずかしさ。

フォームを直すという名目で、山上の手があたしに触れる。

柔軟組むのも山上で。

勿論他の部員がいる中で、それは練習の域を出ない、極々自然な流れのなかで行われるわけだけど。


――恋する乙女には辛い仕打ちだぁ~


結局、山上があたしを陸上部に誘ったのは、走りの弱い女子陸の補強の為で。

聞けば、山上は男陸の部長だって言うし。

練習を終え、あたしはすっかり汗だくになって、校庭脇の芝生の上に寝転んだ。


――マジ疲れたぁ~


でも、身体動かすって気持ちいいな、やっぱ。

ちっぽけな悩み事も、どうでもよくなっちゃう。

あたしに女々しい恋愛は似合わない。


「ほら、水分補給」


目の前に差し出されたスポーツドリンクの入った紙コップ。

「あ、サンキュー」

「一日目から悪かったな。疲れただろ」

「あ、まぁ、疲れたけど気持ちいい。山上、誘ってくれてありがと」

いや、マジ感謝してるし、とあたしは満面の笑顔でスポーツドリンクを飲み干した。

「お前って……」

「さぁて、着替えて帰るとするかな」

「あぁ……、お疲れ」

歯切れの悪い山上を残し、あたしは女子更衣室へと向かった。

マジ、汗臭いし。
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