アポロチョコ
手を引かれて歩き出した。
山上の背中がやけに広い。
――って、今、なにが起こった?
えっと、教務室を出たらそこに山上がいて、送る送らないの押し問答があって、問答無用って、ゴタゴタぬかすなって……
――あたし、キスされたぁ~~~
「ちょ、ちょっと山上、あんた今何した?!」
「接吻」
「せ、接吻?!」
「あ、嫌だったか、ゴメン」
「そ、そういう問題じゃないだろぉ~」
「だって、お前がだまんねぇから」
こいつはもしかして、新入部員を手篭めにするセクハラ部長なのか?
いやいや、こいつは単なる陸上馬鹿の筈だ。
――落ち着け、咲、落ち着くんだぁ~
あたしは半端無い胸の鼓動を鎮めるべく、深呼吸を繰り返していた。
きっと深い意味は無い筈だ。
奴のこの落ち着き様から察するに、単に煩いあたしを黙らせる為の手段でしかなかったということだ。
――むぅ~、だとしたら悔しい!