アポロチョコ
「ただいまぁ~、母さん、飯一人分追加」
玄関に入るなり叫ぶ山上。
「はいよっ、また陸部の後輩かい?」
すぐさま、勢いの良い返事が返ってきた。
「ま、そんなとこ」
「いらっしゃい、どうせまた雄太に無理矢理連れてこられたんでしょ。
さ、遠慮しないで……」
奥からエプロン姿で現れた、ふくよかなご婦人に頭を下げて挨拶をした。
「今晩は、お邪魔します」
「ありゃ、こりゃたまげた。雄太、女の子じゃない?!」
穴の開くほど上から下までマジマジと見られて、あたしは居心地が悪い。
「若宮咲です。山上くんとは同じクラスで……」
さらに続けたあたしの挨拶を山上が遮った。
「今日から陸上部入ったんだ。だから俺の後輩」
成る程、そこが重要なわけだ。