アポロチョコ
「山上くん、関東大会、3000Mに出場だって? 凄いね」
「ん」
「応援いっちゃおうかなぁ」
「……」
クラスの女子に囲まれて、それでも無言を押し通す山上の無愛想さに呆れていた。
「やがまみぃ~、なんとか言えよぉ」
更に周りに集まってきた野郎どもに囃し立てられて、山上がやっと口を開いた。
「大会、今年は山梨だぜ、朝早いし遠いし、応援はいらねぇ」
あたしは、きっぱりと言い切った彼の横顔に見惚れてしまう。
「えぇ~」
何故かざわめき立つ女子達。
遠い山梨を思ってか、はたまた彼の拒絶に抗議してのざわめきなのか?
「日帰り無理だし、俺だって泊まりだし」
「そうなんだぁ、残念」
あっさり引き下がるあたり、その興味の程を計りかねるが。
山上が陸上部のエースで、中距離の記録保持者で、女子からも少なからず人気のイケ面だと知ったのは、彼が夏の都大会で優勝し関東大会の切符を手に入れた時だった。
――今更だよなぁ~
もともとクラスでも浮いたアウトローなあたし。
そんな華やいだ話題に混じれるわけもなく。
ただ耳をそばたてて聞いていた。