アポロチョコ

それでも野郎の胃袋にはまだ余裕があるらしく、彼らは自ら丼にご飯をよそい、シメのお茶漬を食らっている。

あたしは、空になった皿を重ねて台所へ。

あたしがまともに手伝えるのは洗い物くらいだからね。

「お母さん、ご馳走様でした。

ここはあたしが片付けますから、あっちで一休みしてくださいな」

「お気持ちは嬉しいけど、このお皿の量よ。二人でやったらそれだけ早く終わるってもんでしょ」

「ですね」

あたしはお母さんと並んで仲良く洗い物。

――なんか、和むなぁ~

あたしの家は両親共働きで、おまけに不仲ときてる。

二人とも、ほとんど寝に帰ってくるだけで、必要最低限の会話しか交わさない。

そんな状況に慣れた、というより諦めたと言う方が正しいかな。

楽しい家族の団欒とか、心通う会話とか、そう言うものはあの二人には期待していない。

二人が離婚せず、それでも家族の形を保とうとしているのは、ひとえにあたしの為なんだと分かっているから。

それ以上を望むのは、二人に悪い気がして。


だから、こんな家族に憧れていた。

喧嘩する兄弟や、賑やかな食卓。

母と並んで立つ台所。
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