アポロチョコ
「咲ちゃん、いつもこんなむさ苦しいとこに付き合って貰って悪いわね」
「いいえ、寧ろ楽しいです。家にいたら一人なんで」
「家も亭主は船乗りで、一年の大半は海なのよ。
それなのにこんな子沢山になっちゃって」
恥ずかしいわね、なんてお母さんが照れ笑いした。
「確かに賑やかだから寂しくはないけど、男六人を育てるのって重労働でしょ。
叱るのも命がけ」
「でしょうね」
だって、山上を始め兄弟揃ってでかいのだ。
小さくて可愛いのは、一番下の双子の海と龍くらい。
「そんなわたしの苦労を一番わかってくれてるのが雄太なの。
やっぱり真ん中だからかしら、見かけによらず気配りの子なのよ」
「なんとなくわかります」
山上は家で一人のあたしを放っておけなくて、ここに連れて来てくれた。
あたしを陸上部に誘ったのも、同じ理由かもしれない。