アポロチョコ
「無口で無愛想だけど、根は優しい子なの。
だから、咲ちゃん、これからも雄太を宜しくね」
「宜しくって……、
どっちかというとあたしの方が部活でお世話になってるっていうか、こんなに毎日夕飯もご馳走になって。
あたしの方こそ感謝してます」
「あら、そんなの、彼女さんだもの当たり前でしょ」
「えっ?」
――なんかお母さん誤解されてませんか?
「あたし山上くんの彼女とかじゃないですよ」
「あらそうなの? わたしはてっきりそうだとばかり」
「あたしが図々し過ぎるのかも……」
なんだか急に胸が苦しくなってきた。
いくら楽しくったって、こんな毎日お邪魔して、お母さんが誤解しても仕方ない。
急に口を噤んだあたしを気遣って、お母さんが饒舌になる。
「さ、咲ちゃん、おばさんの方こそ早とちりで御免なさいね。
そうよね、咲ちゃんみたいな可愛い子、家の息子には勿体ないわよね。
おばさんの言うことなんて、忘れて、忘れて。
わたしは、咲ちゃんが好きなのよ」
勿体ないのはあたしの方で、山上は普通にカッコ良くて、学校では女子にも人気なんです。
あたしが勝手に好きになって、あたしが勝手に付いて来て、あたしが勝手に誤解されて、あたしが勝手に……
――ううぅ……、なんだか泣けてきたよ。
「さ、咲ちゃん?!」
涙を拭こうとして洗剤の付いた手で目を擦ったもんだから、沁みて沁みて涙が溢れた。
「目がいてぇ~」
あたしは我を忘れて絶叫した。