アポロチョコ
「なんだ?! 咲どうした?!」
あたしの絶叫に驚いて、山上が台所にやってきた。
「洗剤が目に入ったぁ」
「なにやってんだお前。洗い物もろくにできねぇのか?」
「うるさいっ! 入ったものは仕方ないだろぉ~」
拭くに拭けない両手を前に、あたしは目をしっかと閉じたまま、声のするほうに向かって叫んだ。
「ほら、こっちに顔かせ」
頭を丸ごと抱えられ、あたしの顔を流しの水の下に突き出すと、山上があたしの目を指でそっと洗った。
荒々しさに反した山上の優しい指。
「どうだ、まだ沁みるか?」
かけられた優しい言葉。
「だ、大丈夫……」
目の痛みより、恥ずかしさの方が半端ない。
――お母さんだって見てるのにぃ~
「母さん、タオル」
「はいよ」
渡されたタオルで顔を隠した。
もうこれ以上ここには居られないよ。