アポロチョコ
「だって、自分の練習もそこそこに、貴方にかかりっきりじゃない?」
「そうなのか……、気づかなかった。
そりゃ悪いな。
あいつの練習邪魔しちゃ申し訳ない」
夏の都大会までは現役だ、と豪語していた山上を思い出していた。
「ま、季節はずれの新入部員だし。
自分が誘った手前もあるんじゃない?」
あいつそういうとこ律儀だから、と西原は続けた。
「忠告ありがとう。
練習メニューもだいたい決まったし、あとは地道に自分で頑張るよ」
神妙な面持ちで西原に礼を言うと、彼女は怪訝そうな顔を向けた。
「あなた……、わかってないのね……」
「わかってるよ!」
あたしの立ち位置とか、あいつとのかかわり方とか。
人に期待し過ぎると、とんだしっぺ返しを食うんだってことも。
だから、あたしは自分の出来る範囲で、自分を納得させるしか出来ないってことも。
「まぁいいわ、貴方の指導は山上に任せたんだから」
なんでお前にそんな呆れられるのか、とか。
なんでそんなに身体が柔らかいのか、とか。
突っ込みたいのは山々だったが、もう時間だ。
「先にグラウンド行ってるぞ」
あたしは逃げるように部室を飛び出した。