アポロチョコ

「じゃ、次は軽く5週」

身体慣らしのあとは、夫々の練習メニューに入る。

「山上、あたしのメニューはもう一通りわかったから、あとは一人でできる。

お前は自分の練習に戻れよ」

あたしは出来るだけ普通に、さらりと、山上に向かって言った。

「は? 素人が生意気言うな」

「だって西原が心配してたぞ、お前が自分の練習を全然してないって」

俄かに眉間に皺を寄せた山上。

「余計なことを……」

「だから……」

あたしはできるだけお前に期待しないように距離を置きたいんだ、と心の叫びをそのまま声にすることまでは叶わず、その言葉は山上の言葉に飲み込まれた。

「お前に心配される覚えはない。自分のことは自分が一番良くわかってる」

問答無用、つべこべ言うな、といつもの様にあたしの練習に付き合う山上は心なしか機嫌が悪かった。
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