アポロチョコ
「腕の振りが違う! 何度言ったらわかるんだっ!」
叱咤する声にも力が篭る。
――くそぉ~
あたしは負けじと身体を動かした。そりゃもう必死で。
「はぁ~、練習こんなきつかったっけ?!」
お疲れ様、の掛け声と共に芝生に倒れこむあたし。
なんだかいつもの倍は疲れた気分だ。
「ほれ、水分補給」
そう言って差し出された紙コップを素直に受け取った。
こういう気が利くところは三男故かと妙に納得。
だけど、それが自分だけに向けられたものじゃないとわかっている。
――こら咲、気を張らなきゃ駄目!
スポーツドリンクを一気に飲み干してあたしは立ち上がった。
「じゃ、お先に」
そう言って、極自然に山上に背を向けた。