アポロチョコ
「ちょっと待て」
すかさず腕を後ろから掴まれ、あたしは引き戻される。
――くそぉ~、一歩遅かったか!
「咲、お前さ、昨日のあれは何だ?」
「何って?」
山上の直球な質問に、ある意味潔さを感じた。
「彼女じゃないとか、けじめとか」
「あ、それはもう納得済みだから」
あたしはくるりと山上に向き直り、その腕からすり抜けた。
「何をどう納得したって?」
向き合った奴の眉間には一筋の大きな皺。
やはり、直球には直球で返すのが筋だろう。
「あたしと山上は、クラスメートで陸部の先輩後輩で。
あたしは山上の走りが好きで、憧れてもいる。
こうして直々に練習みてもらって感謝してる。
それで十分だなって」
あたしは精一杯の強がりを笑顔で言い切った。
だから、どうかあたしをこのまま行かせてください。