アポロチョコ

なのに……

「そっか、なら問題ないな」

「えっ?」

「今日もちゃんと家へ来い」

母さんも待ってるし、と言い足した山上はいつもと変わらぬ彼なのだけれど。

「……いかない」

ってか、いける訳ない。


――嗚呼、こいつはなんもわかっちゃいない……


「何でだ?」

「だから……、けじめだって言ってんだろ!」

「お前、何こだわってるんだ?

俺は彼女なんてまどろっこしいもの作る気は無いし……」


――嗚呼、神様は残酷だ。


「今日もご指導ありがとうございました。

あたし帰るわ。

悪いけど用事あるから山上の家には行けない」


「待てよ……」


と引き止める彼の声に耳を塞ぎ、また明日、と付け足して、あたしは勢い踵を返して彼のもとから走り去った。
< 64 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop